第29章 「宇宙は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず、といえり」―中村貴裕さんのバランス力と起業家精神

 中村貴裕さんは山形県高畠町に熱中小学校が誕生したころ(株)ispaceも始動したので、各地で授業をしていただくたびに大きな成長にワクワクする先生の一人だ。

 白兎(日本では月には兎がいる、その月を探査する着陸船)HAKUTO-Rは、ispaceが行う民間月面探査プログラムで、中村貴裕さんが推進していた宇宙プログラムの一つだった。独自のランダー(月着陸船)とローバー(月面探査車)を開発して、月面着陸と月面探査のミッションを行うために、2022年12月にSpaceXのFalcon 9で打ち上げられ、今まさに月面周回軌道上で実験中だ。(その後残念ながら世界民間初の月面着陸は成功しなかったが、たくさんの成功を収めたのは皆さんご存じの通り)

 そしてispaceが東京証券所グロース市場に上場して資金調達に成功したが、中村さんはCOOを既に辞職していて今は、創立した株式会社Midtownの代表取締役CEOでおられる。そんな、日本総合商社宇宙事業部を一人で切り開いて来たような方が、なぜ超多忙の中で各地の熱中小学校で授業を重ねていただけるのか? これは宇宙のではないが、実は大きな謎で今回インタビューで確認したい点だった。

とかち熱中小学校での授業。2019年12月21日 更別村にて

 中村さんは決して物理や工学の専門家ではない。高校生の頃に読んだ科学雑誌 Newton をきっかけに宇宙に興味を抱き、九州大学、東京大学大学院で太陽系起源の研究をした後、新卒でアクセンチュア(株)に入社し小売や製造業のSCM領域のコンサルティングに従事。その後(株)リクルートに転じ、企画・立案した事業の立ち上げを経験したという(株)ispace 参加以前の経歴でもわかるように、事業や組織、資金調達などの事業戦略創りの専門家で、我が国ではあまりお会いできないタイプの人だ。

 昨年創業された(株)Midtown は宇宙×気候変動×生物多様性をキーワードに地球規模の社会課題解決を目指しているという。‘スペースシフト’ というベンチャーのCSO(戦略最高責任者)としては衛星から得られるデータを、AIによって自動解析する技術を開発しているベンチャーの支援もされている。

宇宙を人類の生活圏に ~史上初の民間月面探査への挑戦~

 さて、最初の熱中小学校の授業は2017年、徳島県上板町だった。

 とくしま上板熱中小学校(丸山力校長先生、近藤紳一郎教頭先生、瀬部昌秀事務局長)は藍染が活動の中心で、比較的平均年齢も 60歳以上と高い学校だ。

 2018年には、山形県高畠町、富山県高岡市、福島県会津若松市、2019年は宮崎県小林市、鳥取県琴浦町、北海道十勝、2020年以降和歌山県上富田町以下5か所、これまでにほとんどの学校で授業をやっていただいた。

 これは独断だが、月や地球を回る衛星の世界からは東京も、上板町も、上富田町も同じ日本列島の中で、中村さんの中では同じ‘人類’。同じ困難に立ち向かわなければならない同胞だと思っているに相違ない。知らない小さな町に知り合いができることは当然なことなのだ。

授業終了後の懇親会も楽しみの一つ(中村さんは右から2人目)

 中村さん、月から地球の問題解決にようこそ。

 熱中小学校のご縁がなければ、まさか訪問し、そこの住民の方とお酒を飲むことはなかったと思う、私たちはその時間を頂けたことを感謝するとともに、もし万が一将来悩むことでもあったら、授業に関係なく熱中の田舎を訪問していただけたらと思います。

‘宇宙は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず’中村さんのバランス感覚に期待しています!

中村貴裕さんのインテビュービデオはこちら:

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