第16章 沖縄尚学高校と「のと・おん吹奏楽団」の共演

 甲子園の高校野球には応援団、特に吹奏楽部の応援合戦がつきものだ。
 今年の甲子園では、春夏を通じて初めての甲子園出場となった豊橋中央高校は吹奏楽部がない学校だったが、なんと地区予選決勝で破った東邦高校の「マーチングバンド」に協力をお願いして実現するというエピソードが話題になった。

「のと復興音楽ツアー@大阪・関西万博」で驚く出来事があった。私や「天地人」メンバーそしてスタッフの宿泊ホテルがなんと沖縄尚学高校野球部と一緒だったのだ。皆礼儀正しく、体つきはあまり大きい選手はいない。決勝戦の前日、練習に行く部員たちとロビーで会い、頑張ってね! と声をかけた。


 8月23日(土)、彼らの試合はいよいよ10時から。そして私たちの「のと復興音楽ツアー@大阪・関西万博」の開始は11時。猛暑の中、珠洲市と能登市から約80人の生徒さん、先生、社会人の吹奏楽団が2台のバスで前日の8月22日(金)夕方到着後、宿舎で練習。翌23日(土)本番の日も万博会場に早朝入って練習、11時本番、午後能登にバスで戻るという、万博の見学の時間がなく演奏に集中の日程だった。
「のと・おん吹奏楽団」は、「のと復興音楽ツアー(noto・on)」で今年2月に能登町、3月には珠洲市で「Soul & Beat TEN-CHI-JIN(天地人)」と共演した珠洲市および能登町の吹奏楽団体で構成されている。石川県立飯田高等学校吹奏楽部、石川県立能登高等学校吹奏楽部、能登町立能都中学校吹奏楽部、能登町立柳田中学校吹奏楽部、珠洲市立緑丘中学校吹奏楽部の部員達と、大人のメンバーは「ウインドオーケストラのと」と「すず吹奏楽団」が一緒に演奏。名誉団長は坂 武夫(宇出津吹奏楽研究会)、団長は辻 雅和(すず吹奏楽団)、指揮は貞弘 佳彦(すず吹奏楽団)だ。坂さんには指揮もやっていただいた。若者と大人が世代を超えて共に演奏するという考えは能登の太鼓グループにも共通していた。能登には世代の継承の知恵がある。
 最初「天地人」との共演は予定されていなかったが、当日、「私たちがここまで努力して来れたのは、もう一度一緒に演奏したかったからです」の声に、急遽「天地人」も参加する演奏会になった。そしてたくさんの観客の中で ‘アンコール’ 付きのベストな演奏をやっていただいた。

 二度にわたる演奏が終わった12時半にスマホを見ると、沖縄尚学高校も優勝が決まっていた。まるで万博会場の吹奏楽団も甲子園の沖縄尚学高校も互いに応援に力を貸したような時間の流れだった。能登の汗、沖縄の汗が日本の汗になったのだ。

 演奏終了後、舞台の上で記念撮影をする生徒たちを見て、万博まで来てもらって何も見学しない日程でお願いしたのはやっぱりかわいそうでした、と村田先生に話したら、「堀田さん、仕事は仕事、遊びは遊び、とけじめをつけるのも教育です」ときっぱり話された。少し離れた珠洲市、能登町を週末に往復しながらこの日を目指して練習を重ねた皆さんにとって、この日の思い出は彼らの中で一生ものになってくれたかもしれないと、どこか納得していた。

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