第17章 ‘野遊びの力’を人生のスタイルに―山井太さんを支える‘キャンプの力’

(株)スノーピーク社長の山井太さんと初めてお会いしたのは6年ほど前の北海道十勝の更別村でのバーベキューだった。当時山井さんに「十勝さらべつ熱中小学校」(現在の「とかち熱中小学校」の前身)の校長先生にしたい、それにはバーベキュー大会を催して、そこで熱心に口説く事を現地が画策した。当時からスノーピークは十勝で広く活動し、山井さんも個人的に十勝での釣りなど自然がお好きとのことだった。

 スノーピーク製の機器を使い、食材豊かなバーベキュー会場で山井さんが ‘YES’ と言ってくれた時の関係者の笑顔が今でも忘れられない。

2016年10月、北海道十勝の更別村でのバーベキュー大会にて

 2023年3月4日、社長に復帰されてお忙しい中、山井さんは昨年10月開校したばかりの紀州かつらぎ熱中小学校(八塚政彦校長、中前光雄教頭)の第1期最終授業を受け持っていただいた。

 会場はかつらぎ町の天野地区にある「ゆずり葉」という廃校を再生した宿泊、セミナー施設である。天野地区には世界遺産:紀伊山地の霊場と参詣道があり、丹生都比売神社などの歴史的な建造物もあって高野山の入口にあたる。

 スノーピークの成長の中で、変えない信条、挑戦し続ける事業の話に質疑も多く約2時間の熱のあふれた授業になった。平野高野町長、中阪かつらぎ町長も参加した事で地域町づくりのビジョンも議論になった。

 自然の中で ‘キャンプの力’ で人間性を取り戻し、家族の絆を育て、友人や隣人とのコミュニティを生んでゆくプラットフォーマーとして、スノーピークはキャンピング道具、キャンプフィールドを整備して地方創生にも貢献する。衣食住、働き方、クリエイティブな環境も ’デザインの力‘ で提供する。

 しかし、原点は ‘遊び心’ だ。社員の多くはキャンプ好き、最新の本のタイトルは『「楽しいまま!」成長を続ける経営』(日経BP)だ。

紀州かつらぎ熱中小学校での授業風景。質問が絶えずに2時間に及んだ

 それは「もういちど7歳の目で世界を。。」という熱中小学校の合言葉や、「コミュニティ創りによって豊かな人生のスタイルで地方創生を後押しする」という目標にも重なっている。山井さんが「熱中小学校の教諭というより、関係者として」という自己紹介のコメントはそうした相互理解に基づいている。

紀州かつらぎ熱中小学校での記念撮影(中央が山井太さん)

 一方で、スノーピークのブランド戦略、いわゆる ‘高価格帯’ サービスの世界は熱中小学校には真似ができない。

 長野県白馬町でのグランピングの参加費、新潟県三条市で運営する FIELD SUITE SPA という温泉宿泊施設の宿泊費も新潟県では有数の高価格帯だ。製品とサービス品質プラス、お客様との共通の世界観の醸成。スノーピークのブランドへのプライスレスなまでの信頼の域に達しようとする。

 世はインフレに向かい、消費者の二極分化が進んでいる中で、‘いつかはスノーピークに’ と、あこがれる日本の若者のキャンプ愛好家たちは、周辺の製品をつかいながら ‘スノーピークの世界’ を真似ていくのだろう。

 社員が献身的に、好きなことを追求する中で、新しい起業家たちが大きな日本のキャンプ市場を埋めていってほしいものだ。

 キャンプ経験者50%という米国に対して、まだまだ日本は8%。山井さんはこの差を埋めることが日本の活性化、イノベーション環境を変えることだと信じている。

 授業の後は、「ゆずり葉」の校庭でテントを張ってバーべキュー、焚火を囲んでの歓談時間になった。標高600メートルでのキャンピングはとても寒く、山井さんのインタビューでは私は膝を震わせていた。

 親切な生徒の皆さんのおかげで、私だけ特別にテントに石油ストーブ、寝袋にカイロを入れて、‘人生初のキャンプ’ も何とか ‘新しい朝’ を迎えたが、さすがに今朝は恒例の水かぶりは断念せざるを得なかった。

山井太さんのインタビュービデオはこちら:

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